イカ、タコ、エビ、カニ、サンゴ、イソギンチャクやウミウシなどの水産無脊椎動物の研究を推進し、研究者を応援する財団

公益財団法人 水産無脊椎動物研究所

財団についてうみうしくらぶとは
  • トップ
  • イベント
  • 研究助成
  • 出版物
  • 水産無脊椎動物図鑑
  • ご支援のお願い
トップイベント第20回「磯の生物勉強会」(黒潮生物研究所)報告

第20回「磯の生物勉強会」(黒潮生物研究所)報告

2014年7月13日-15日に高知県大月町の黒潮生物研究所で行われた第20回磯の生物勉強会は大盛況のうちに終わりました。
ご協力くださった黒潮生物研究所の皆さま、参加者の皆さま、本当にありがとうございました。
なんと、高知新聞に勉強会の様子が取り上げられました!我々の熱意が伝わったようで、何とも嬉しいことです。


2014年7月4日、フィリピンの東海上で台風8号が発生した。磯の勉強会開催の約一週間前のことである。 “大型で非常に強い台風”と各地に警報が出され、勉強会の開催が危ぶまれた。「行ったことがないので四国に上陸したい」なんて、 台風のようなことを言っていたのが悪かったのか。しかし心配をよそに高知には大きな被害もなく台風8号は11日に温帯低気圧に変わった。 そして13日早朝、ついに四国上陸を果たした。

記念すべき第20回目となる今回の開催場所は、高知県大月町西泊にある黒潮生物研究所。足摺岬をさらに西へ行った高知の西端にあり、 まっこと人気な坂本龍馬が生まれ育った高知市からは車で3時間半という道のり。大月町の国道から山道へ入り、 ひとつ山を越すと山の谷間に集落がある。さらにその奥には海が顔をのぞかせていた。いかにも海の研究所らしく海岸線沿いに建つ白い建物に “黒磯生物研究所”の看板が掲げられていた。

西泊の集落と黒潮生物研究所

無事に研究所の中地シュウ所長や前泊メンバーに迎え入れられ、他の参加者もぞくぞくと到着し、予定通りの開催と相成った。 今回は遠方遙々、関東~沖縄の各地から男性9名、女性7名の総勢16名の参加である。

まずは中地シュウ所長から研究所やその周辺についての紹介があった。黒潮生物研究財団は当財団と同じ公益財団法人であり、研究所はその拠点。 黒潮流域における環境と生物の調査・研究、保全、普及・啓発活動をしている。子供向けの普及活動では、サンゴのキャラクター占いやウニの輪抜けを競う磯リンピックなど、 工夫をこらしたアイディアがたくさん!また、黒潮が直撃する西泊周辺海域は、サンゴを中心とした海で、他の生物も南国色が強い。 今まで調査不足だったが、黒潮研での調査で少しずつ海の様子やサンゴの分布などが分かってきている。 断崖から干潟、砂浜といろいろな地形があり、本当に多様な生き物がいることを紹介してくれた。

西泊の港と天満宮の天井絵馬

その後は周辺の散策に出かけた。台風が去った後で海はやや荒れ気味。しかし目の前に広がる海に、明日の採集への期待が膨らむ。 近くにある天満宮にはたくさんの天井絵馬が。この地はかつて宝石サンゴ漁が盛んで、大きな物が採れると神様にお礼の意味を込めて絵をかかせたという。 そのため珊瑚を始め、海の生き物の絵が多い。これには皆大興奮!最近は再び宝石サンゴ漁のブームが来ているらしく、新しい絵もいくつかあった。 ちなみにサンゴ漁のターゲットとなる水深100m前後はダイビングでも潜れず、ドレッジでも曳けないいわば穴場領域であり、 サンゴ網に引っかかってくる生き物は未知なる興味深いものが多いそうだ。

この日は懇親会ということで地元の美味しい料理をいただいた。高知といえばの新鮮な魚介類から、この辺でよく食べられているというイタドリという山菜などを囲んで乾杯! 各々自己紹介をし、夜遅くまで語り合って明日の採集に向けて結束を深めた。


7月14日、勉強会2日目。朝ぼんやりと海を眺めていると海面が帯状に赤く染まっている。こんなところでも赤潮が出るのだなーなんて思っていたら、 なんと昨晩サンゴが産卵したらしい!
干潮が正午すぎだということで、午前中は研究所の研究員の小渕正美博士による棘皮動物および研究対象であるウミシダのお話。 小渕博士は学生時代に当財団の研究助成を受けて研究を進めた経緯があり、「やっと恩返しができる」と勉強会の運営に尽力してくださった。 助成を受けて行われたセソコヒメウミシダの研究はダイビングで積極的に海に潜っているからこそできた発見であり、一同その熱意に感心した。

(右写真:世界最小!雌雄同体で保育を行うセソコヒメウミシダ)

早めのお昼を済ませ、いよいよ磯採集へ。目標はみんなで100種。目的のシウラ浜へは海沿いの山をひとつ越えなければならない。 なかなか険しい山道だが、地元のおばちゃん達もこの道を歩いて浜でアサリを採ったりするらしい。道が開けた先には広い砂利浜があった。潮も充分に引いている。転石下班と岩盤班に分かれて、行動開始!

シウラ浜での集合写真

まず目につくのが至る所に出没する巨大シラヒゲウニ。転石をめくればカニやクモヒトデ達がすたこらと逃げてゆき、巻き貝がポロポロと石から離脱していく。 ある大きめな石の裏には目にも鮮やかな黄色の卵塊と親指大ほどのイボニシがびっしり!集団で産卵していたようだ。うみうしくらぶ待望のうみうしは、メリベウミウシが大量。 場所によっては石をめくるたびにメリベが・・・。いろんな模様のヒザラガイやカサガイ、少し深いところにはガンガゼやウツボなんかが顔を見せていた。 生き物の多さに感動しながら夢中で採集していると、あっという間に14時になっていた。この日は曇天だったので、思いの外磯採集がはかどったのだ。

(左)巨大シラヒゲウニ、(右)転石下のアカクモヒトデ

イボニシの集団産卵

研究所に戻って各々が採集してきた生き物をしばらく眺める。この時が一番幸せなのかもしれない。その後、生き物を分類群ごとに分けていき、同定作業に入った。 今回の目的はシウラ浜の生物相調査である。図鑑とにらめっこしながら種を決めていく。特に種類の多い貝類は難題で、夜遅くまで図鑑を片手に格闘した。


7月15日、最終日。残りの同定作業を進め、生物のリストを作っていく。それぞれが採集・同定した生物の名前を書き上げ、集計すると・・・・なんと149種(後に見たけど採集していないものなどを含めて数えると160種超)!! たった1回の磯採集で目標の100種をゆうに超える種数を採集することができた。その後は採った生き物について解説を聞く。また、標本写真の撮り方についてのレクチャーもしていただいた。 生時の色の情報というのはやはり大事!

途中、差し入れに地元住民の方からテングサの手作りコーヒーゼリーや天ぷらなどを頂いた。磯は地元住民にとって非常に身近であり、お気に入りの浜があったり磯遊びに精通しているそうだ。 特に食用となる貝類には生物方言なるものがたくさんあることも紹介してくれた。例えばイボアナゴは穴のくぼみに潜んでいてあまり動かないので“あなご”、 一方トコブシは岩の裏などにいて、すぐに流れるように逃げてしまうので “ながれこ”と呼ばれているそうな。

第20回目と様々な土地を訪れ、生き物を観察してきた磯の生物勉強会であるが、ここまで同定をしっかり行ったのは初めてとのこと。 地元との関わりを大切に、調査研究をすることで豊かな自然を守っていこうとする中地所長に大変感銘を受けた。

これにて無事に磯の勉強会終了。黒潮生物研究所の皆さま、参加者の皆さま、本当にありがとうございました。来年度はどこに行こう。 今回良かったのでハードルが上がってしまった・・・。お楽しみに!


黒潮生物研究所で観察した生物

海綿動物門

カイメンの仲間1
カイメンsp.1
カイメンの仲間2
カイメンsp.2
タマカイメンの仲間
ユズダマカイメン
 

刺胞動物門

ウメボシイソギンチャク
ウメボシイソギンチャク
オオサンゴイソギンチャク
オオサンゴイソギンチャク
オオサンゴイソギンチャク触手
オオサンゴイソギンチャク
 
シマキッカイイソギンチャク
シマキッカイイソギンチャク
撮影・渡辺淑子氏
キッカイイソギンチャク属の仲間
キッカイイソギンチャク
撮影・渡辺淑子氏
ヒメイソギンチャク
ヒメイソギンチャク

 
ミナミウメボシイソギンチャク
ミナミウメボシイソギンチャク

ミナミウメボシイソギンチャク
拡大
ミナミウメボシイソギンチャク2

ヨロイイソギンチャク
ヨロイイソギンチャク

 
キクメイシの仲間
キクメイシ

ショウガサンゴ
ショウガサンゴ
撮影・菅佐原智治氏
トゲルリサンゴ?
トゲルリサンゴ

 
サンゴの卵
サンゴの卵
撮影・内島宏和氏
  
 
イソバナ
イソバナ
撮影・渡辺淑子氏
イソバナのポリプ
イソバナ拡大
撮影・渡辺淑子氏
イラモ(固定後)
イラモ
撮影・渡辺淑子氏
 
コモチカギノテクラゲ
コモチカギノテクラゲ

ウミヒドラの仲間
ウミヒドラの仲間
撮影・渡辺淑子氏
 
 

扁形動物門

ヒラムシの仲間1
ヒラムシの仲間
撮影・渡辺淑子氏
ヒラムシの仲間2
ヒラムシの仲間2
撮影・渡辺淑子氏
ミノヒラムシの仲間
ミノヒラムシの仲間

 

コケムシ動物門

ハナザラコケムシ
ハナザラコケムシ

コケムシの仲間
コケムシの1種
撮影・菅佐原智治氏
イタコブコケムシの仲間
イタコブコケムシの仲間
撮影・渡辺淑子氏
 

軟体動物門

ウスヒザラガイ
ウスヒザラガイ
ウスヒザラガイ2
ウスヒザラガイ他柄
クサズリガイ
クサズリガイ
 
ニシキヒザラガイ
ニシキヒザラガイ
ヒザラガイ
ヒザラガイ
ヒメケハダヒザラガイ
ヒメケハダヒザラガイ
 
ヤスリヒザラガイ
ヤスリヒザラガイ
ヤスリヒザラガイ2
ヤスリヒザラガイ他柄
 
 
アオガイの仲間
アオガイの仲間

ウノアシ
ウノアシ
撮影・渡辺淑子氏


 
クロチョウガイ
クロチョウガイ
撮影・渡辺淑子氏
シラオガイ
シラオガイ
撮影・渡辺淑子氏
ミノガイ科の仲間
ミノガイの仲間
撮影・渡辺淑子氏
 
タコの1種
タコの1種

タコの1種背面
タコの1種背面

別アングル
タコの1種別
撮影・渡辺淑子氏
 
イボニシ
イボニシ

イボニシの卵塊
イボニシの卵塊

ガンセキボラ
ガンセキボラ
撮影・渡辺淑子氏
 
クマノコガイ
クマノコガイ

トコブシ
トコブシ

ハナビラダカラ
ハナビラダカラ
撮影・渡辺淑子氏
 
ヒラヒメアワビ
ヒラヒメアワビ
撮影・渡辺淑子氏
ミツカドボラ
ミツカドボラ

ボラの仲間
クロチョウガイ
撮影・内島宏和氏
 
巻き貝sp.1
巻き貝sp.1
巻き貝sp.2
巻き貝sp.2
巻き貝sp.3
巻き貝sp.3
 
巻き貝sp.4
巻き貝sp.4

巻き貝sp.5
巻き貝sp.5
撮影・菅佐原智治氏
 
 
イロミノウミウシ
イロミノウミウシ

カイメンウミウシ
カイメンウミウシ

クチナシイロウミウシ
クチナシイロウミウシ
撮影・内島宏和氏
 
ヒメマダラウミウシ
ヒメマダラウミウシ
撮影・内島宏和氏
ビワガタナメクジ
ビワガタナメクジ

ミドリアメフラシ
ミドリアメフラシ
撮影・渡辺淑子氏
 
ムカデメリベ
ムカデメリベ
ユメウミウシ
ユメウミウシ
ユメウミウシ側面
ユメウミウシ横
 

環形動物門

ウズマキゴカイ
ウズマキゴカイ
撮影・渡辺淑子氏
ウロコムシの仲間
ウロコムシ
撮影・渡辺淑子氏
クマノアシツキ
クマノアシツキ
撮影・渡辺淑子氏
 
ミドリユムシ
ミドリユムシ

ミドリユムシの吻
ミドリユムシの吻
撮影・渡辺淑子氏
 
 

節足動物門

イワフジツボ
イワフジツボ

カメノテ
カメノテ

 
 
シャコの仲間
シャコの仲間

スジエビモドキ
スジエビモドキ
撮影・川久保晶博氏
 
 
イソカニダマシ
イソカニダマシ
撮影・川久保晶博氏
オオアカハラ
オオアカハラ

 
 
イソクズガニ
イソクズガニ
撮影・川久保晶博氏
オウギガニ
オウギガニ
撮影・川久保晶博氏
ベニホシマンジュウガニの子供
ベニホシマンジュウガニ
撮影・川久保晶博氏
 
オウギガニの仲間
オウギガニsp.1
撮影・川久保晶博氏
コノハガニ
コノハガニsp.2
撮影・渡辺淑子氏
トゲアシガニ
トゲアシガニ
撮影・川久保晶博氏
 
ヒライソガニ
ヒライソガニ
撮影・川久保晶博氏
  
 

棘皮動物門

アミメジュズベリヒトデ
アミメジュズベリヒトデ
ヤツデヒトデ
ヤツデヒトデ
ルソンヒトデ
ルソンヒトデ
 
アカクモヒトデ
アカクモヒトデ
撮影・渡辺淑子氏
ゴマフクモヒトデ
ゴマフクモヒトデ

ナガトゲクモヒトデ
ナガトゲクモヒトデ
撮影・渡辺淑子氏
 
ホウシャクモヒトデ
ホウシャクモヒトデ
撮影・渡辺淑子氏
ミナミイツツメクモヒトデ
ミナミイツツメクモヒトデ

クモヒトデの仲間
クモヒトデsp.2
撮影・渡辺淑子氏
 
アカウニ
アカウニ

ガンガゼ
ガンガゼ
撮影・菅佐原智治氏
ガンガゼ2
ガンガゼup

 
コシダカウニ
コシダカウニ

シラヒゲウニ
シラヒゲウニ
撮影・菅佐原智治氏
シラヒゲウニ2
シラヒゲウニ2
撮影・渡辺淑子氏
 
タコノマクラ
タコノマクラ
タワシウニ
タワシウニ
ツマジロナガウニ
ツマジロナガウニ
 
バフンウニ
バフンウニ
ホンナガウニ
ホンナガウニ
マツカサウニ
マツカサウニ
 
クロホシアカナマコ
クロホシアカナマコ

アカオニナマコ
アカオニナマコ

テツイロナマコ
テツイロナマコ
撮影・渡辺淑子氏
 
ムラサキクルマナマコ
ムラサキクルマナマコ
ニセクロナマコ
ニセクロナマコ
トラフナマコ
トラフナマコ
 
ムラサキグミモドキ?
ムラサキグミモドキ

トゲクリイロナマコ
トゲクリイロナマコ
撮影・菅佐原智治氏



 
ナマコの仲間1
ナマコsp.1
ナマコの仲間2
ナマコsp.2
ナマコの仲間3
ナマコsp.3
 
PAGE TOP
copyright © 1998-2017 公益財団法人水産無脊椎動物研究所 All Rights Reserved.