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財団設立30周年記念シンポジウムを開催しました

「サンゴとサンゴ礁の生き物たち」

 

要旨集はコチラ 

 

 2018年9月22日(土)に当財団の設立30周年記念シンポジウムを東京大学農学部弥生講堂にて開催いたしました。当日の朝は小雨が降りましたが、午後は天気も少し回復し、無事の開催となりました。秋の三連休初日で、当初は参加者が集まるか心配していましたが、参加者数は150名余りと、多くの方にご参加いただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンポジウムは、椿玲未氏(東京大学総合研究博物館)の進行により、当財団の池田友之代表理事からの挨拶で始まりました。池田理事は当財団が設立から30年を迎え、改めて当財団の役割についてを説明し、日本は水産無脊椎動物の宝庫であること、それらの研究に対してノーベル科学賞を受賞した研究は2件しかないことに触れつつ、基礎研究の重要さを強調したあと、引き続き水産無脊椎動物研究への支援を行うことを表明し、挨拶としました。そのあと、椿氏から今回のシンポジウムについての趣旨説明として、サンゴ礁の豊かさの本質は表層的な美しさではなく、多様な生き物同士の関わり合いであり、今回のご講演者の皆様にもサンゴ礁に棲むあまり知られていない生物たちのお話を中心にお話いただくということをご紹介いただきました。

 

総合司会・椿 玲未 氏

池田代表理事の挨拶

 

 

 最初の講演は山城秀之氏(琉球大学瀬底臨海研究施設)による基調講演「サンゴの常識非常識」ということで、サンゴやサンゴ礁について基本的な説明と、白化の原因となる水温の上昇、オニヒトデや病気の影響についてお話していただき、最後に「サンゴの常識と非常識」というクイズ形式のような形でお話いただきました。「サンゴはこうだ」と思っていたイメージが変わる、サンゴについて深く知ることができたお話でした。サンゴ自身は褐虫藻と共生し、サンゴの骨格は生きている部分も死んで白化してしまった部分も様々な生物の棲家となり、空間として利用されている説明なども印象深かったです。近年はサンゴといえば「白化」の悲観的なイメージが強いところですが、それを払拭するようなお話で、サンゴ礁の生物多様性の豊かさを改めて感じました。

 

山城 秀之 氏

太田 悠造 氏

 

次に太田悠造氏(鳥取県立山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館)に「サンゴ礁性魚類とウミクワガタ類の相互関係」という演題で、サンゴ礁の魚類に寄生するウミクワガタのお話をしていただきました。ホンソメワケベラなどにクリーニングをされてしまうウミクワガタの生態系における意外な役割について、興味深い寄生のお話を聞くことができました。ウミクワガタ類は生活史の中で宿主を変えつつ成長していくことが印象的でした。オスのクワガタのような角は、クワガタと同じように挟んだりするとのお話に、海と陸の別のグループのものが、同じ機能をもつ形の部位を持っていることに生き物の不思議さを感じました。

 

太田氏による普及・教育のために     製作されたぬいぐるみ(見本)

うみうし通信バックナンバーを配布

 

15分の休憩をはさんで、岡西政典氏(東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所)に「サンゴ礁とその周辺に生息するクモヒトデ類」をお話いただきました。まずは「クモヒトデ」という生き物がどういうものなのかを分かりやすく説明していただき、サンゴ礁域に生息するクモヒトデやテヅルモヅルとそれらの研究についてお話いただきました。サンゴ礁に存在する海底洞窟にも触れ、深場にいる種が水深の浅い海底洞窟で見られていて、一口に「サンゴ礁」といえど、特殊な環境にはまた違う生物相が見られることを知ることができました。クモヒトデ類は未記載種も多く、研究者も少ないためまだまだ未知数の分類群であることがよく伝わり、また今後の発展も楽しみです。

 

岡西 政典 氏

片山 英里

 

その後、当財団の片山が、「サンゴ礁域の隠れ上手な魚類たち」という演題で、サンゴ礁の見えないところにも多様な魚類がいることを紹介しました。サンゴの隙間にはコバンハゼやダルマハゼ類が潜んでいたり、砂地にはグリグリと左右の眼を動かして水中を伺いながら潜っているトビギンポや、ハレムを作って繁殖をしたり群れで遊泳したりするベラギンポ、ヒラメ類など、気をつけて見てみないと気づかない魚類もサンゴ礁の周りには多く生息していて、それらもまたサンゴ礁の多様性の一部を担っていることをお話しました。

 

最後に、藤井琢磨氏(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室)から、奄美の現在のサンゴやサンゴ礁の状況と、その周辺で見つかった様々な生物に紹介していただきました。単体サンゴであるナガジクセンスガイのタイムラプス写真を見ると、一見すると動きのないサンゴが砂泥の中から外に出てくることがよく分かり、改めてサンゴは動物なのだということを感じることができました。また冬の寒さでサンゴが白化したり、サンゴを殺してしまう海綿に覆われてしまったりと、奄美でもサンゴの状況が厳しい場所はあるものの、まだまだサンゴは元気というお話を聞いて少し安心しました。

 

藤井 琢磨 氏

活発な質疑応答になりました。

 

 以上のように、サンゴが動物だという基本的な知識の紹介から始まり、バラエティに富んだ、あまりよく知られていないマイナーな生物のサンゴ礁での生き様を、5名の講演者にお話いただきました。

10分間の全体の質疑応答では、サンゴの生態について非常に深い質問などもあって盛り上がり、あっという間に時間が過ぎました。最後に、財団理事で日本貝類学会名誉会長の奥谷喬司先生から、今回のシンポジウムはサンゴを中心にその周りの生き物そのものの面白さが集まった内容であったという全体をまとめる閉会のお言葉をいただき、無事に終了しました。

 

当日ご参加いただいた皆さま、講演者・司会者の皆さま、開催にあたり協力してくださった皆さま、ありがとうございました。

 

 今回のシンポジウムを開催するにあたり、TwitterFacebookでカウントダウンコラムを実施し、

サンゴ礁の生き物たちのイラストとともに今回の司会を務めてくださった椿玲未氏によるコラムを

掲載しました。

ホームページでは全体を掲載していますので、こちらもぜひご覧ください↓

カウントダウンイベント

 

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