第23回「磯の生物勉強会」が7月11日~13日の日程で、今年は宮城県女川町にある東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター(女川フィールドセンター)で行われました。昨年に引き続き、応援の思いを込めて東北・女川にお邪魔しました。はるばる遠方から参加者13名、先生方や事務局合わせて総勢22名となりました。東北でも気温は毎日30度を超えていましたが、最終日に雨が降ったほかは天候にも恵まれました。
石巻から1時間半に1本の電車で、皆で女川駅に到着です。駅舎や駅前の観光広場はとてもきれいな建物になっていましたが、海岸沿いはまだまだ工事が進められていました。復興はまだまだ続いていることを身にしみて感じました。駅には温泉が併設されていたので、早速、お風呂に入ったり、女川の食事を楽しんだりして実験所に向かいました。こうしたことも楽しみの一つですね。
女川フィールドセンターに到着してすぐに、技官さんによる施設利用の注意点や、地震が起きた場合の避難についてなどを説明していただいた後、青木先生から6つの内容に分けた講義をしていただきました。1つめは女川センターの被災と復興ということで、実際にどのような被害があったのか、青木先生は震災後すぐに着任されたということで、実験所の池田実先生の資料をお借りして写真や資料で説明してくださいました。
そのあと、先生の研究室の紹介、ご専門である葉状動物やアラメ、コシダカガンガラ、コンブノネクイムシのお話をしていただきました。特に、コンブノネクイムシのお話には青木先生の愛があふれており、皆さん釘付けに!コンブや海藻の表面に動物がいるのは分かるのですが、茎の中に穴をあけて入っているそうで・・・さらにその家族構成が面白く、同じ親から生まれた最初の子供と、二回目に生まれた子が一緒に同居していて、いつまでも自立できない子供たちが巣穴にいるようです。明日はコンブを見つけたら見てみよう!と皆さん思ったと思います。そのあと、食堂でテーブルを囲んで皆で食事を食べ、談話を楽しみました。
菅佐原氏撮影
2日目は午前中に磯採集、午後に採ってきた生物の同定と観察、青木先生のレクチャーを受けました。磯採集は、センターのある小乗浜から30分ほどバスで移動した小屋取浜で行いました。浜の先にある小さめの磯ですが、いろいろな生物がいて、皆さん思い思いに採集を楽しみました。
東北の磯は、潮間帯に生息する生物の分布がはっきり分かれているそうで、一番上の層にはムラサキンコという貝だけがびっしりとついています(菅佐原氏撮影)。
ここで、前日に青木先生がお話をしてくださったコンブノネクイムシを探してみます。青木先生にどのように探したらいいかを教えていただき、皆コンブの根元を切って開いてみていました。みな夢中でのぞき込んでいます。海藻の表面にもヒドロ虫やコケムシ、ヨコエビなどが見られて、多くの生き物が見られました。
岩にくっついている海藻をめくってみると、びっしりと黄色い粒が岩にくっついています。皆でと見てみると、真ん中にイボニシがいて、彼らが産卵した卵でした。イボニシは集団で産卵するそうです。皆さん夢中で写真を撮ったり、観察をしました。
↑イボニシの卵塊(菅佐原氏撮影)
戻って午後から観察です。同定して名前を記入したり、顕微鏡で観察したりしました。コンブノネクイムシのつぶらな瞳に、青木先生と同様、魅了されてしまいます。動物だけでなく海藻も色んな種類が観察できました。
そのあと、青木先生に女川の潮間帯に見られる生物のお話をしていただきました。震災の影響で水面下に沈んでしまっただけでなく、堤防のかさ上げによって沿岸の生物が影響を受けることを知りました。海藻がどれぐらい大きくなったかの測定方法など、大変面白く聞かせていただきました。普段は動物だけを対象とした話を聞く機会が多いなか、青木先生は海藻と動物のつながりのお話もたくさんしてくださったので、大変勉強になりました。
菅佐原氏撮影
夜は駅の近くの新しい建物にある居酒屋「ニューこのり」さんで懇親会です。魚もお料理もおいしく、楽しいひと時をすごしました。懇親会後にセンターに戻ったら、また観察を続けます。夜更けまで・・・・
3日目の朝に掃除などをして、センターを後にしました。新しい施設で快適に過ごさせていただき、3日間お世話になりました。今回は生き物もたくさん見られ、また普段見なかった海藻の中などを覗いたりして、充実した勉強会になったと思います。皆さんお疲れ様でした。
参加者のみなさま、色んなお話をしてくださった講師の青木先生、一緒に参加してくださったイアン先生、サポートをしてくださった大学院生の伊藤さん、女川フィールドセンターのみなさま、本当にありがとうございました!